中国向け越境ECのシステム開発ガイド | 技術的注意点と成功手法を解説
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中国の越境EC市場は、日本企業にとって未開拓の巨大なビジネスチャンスを提供しています。
中国のデジタル消費者は日本製品の品質と信頼性を高く評価しており、化粧品、食品、ファッションなど幅広いカテゴリで需要が急増中です。しかし、中国向け通販事業の立ち上げには、規制対応や文化の違い、技術的な障壁など、多くの課題が伴います。
本記事では、「なぜ中国向け通販事業に取り組むべきか」「具体的な施策や注意点」「成功のための技術的考慮事項(システム面)」まで、包括的に解説します。中国市場への参入を検討している日本企業の担当者の方々に向けて、具体的なアクションプランを提供することを目指します。
目次
今回の主要ポイント
・中国の越境EC市場は急速に成長しており、日本企業にとって大きなビジネスチャンスがあります。
・市場参入には現地消費者理解や規制対応が不可欠で、失敗事例から学ぶべき点が多く存在します。
・グレートファイヤーウォールの影響を考慮し、アリババクラウドの利用が推奨されます。
・ライブコマースやソーシャルメディアを活用することで、消費者エンゲージメントを高められます。
なぜ中国向け通販事業に取り組むべきか?その理由

急成長する巨大市場の魅力
中国のEC市場は世界最大規模であり、その成長率は驚異的です。
市場調査会社Expert Market Researchによると、2023年に2.22兆ドルだった中国EC市場は、2025年には約2.64兆ドルに達すると予測されています。さらに、2032年までには4.77兆ドルに拡大し、年平均成長率(CAGR)は8.90%に上るとされています。
また、eMarketerのデータでは、2023年の中国EC市場規模は2兆9,875億USドルで、前年比11.4%増と報告されています。2027年には3兆9,708億USドルに達する見込みで、今後も拡大傾向が続くと予想されています(出典:eMarketer, 2023年レポート)。
さらに、経済産業省の発表(2024年9月25日)によると、中国の越境EC市場は特に注目すべき成長分野であり、日本からの輸出額も増加傾向にあります。以下の図は、経済産業省の資料から引用した中国EC市場の成長予測です。
図:中国EC市場の成長予測(経済産業省)(引用元:経済産業省, 2024年9月25日発表資料)
日本製品への高い需要
中国消費者による日本製品への需要は非常に高く、特に化粧品、食品、健康関連商品が人気です。
Nikkei Asiaによると、2021年に中国は日本食品の最大輸入国となり、輸出額が前年比35.2%増加しました。また、The Japan Timesの2020年データでは、中国の日本製化粧品輸入額が43億ドルに達し、韓国産を上回るなど、品質への信頼が確立されています。
さらに、インターネット普及率が73%(約1.05億人がECを利用)と高い中国では(出典:Daxue Consulting, 2023年)、モバイルショッピングが主流です。この環境下で、日本製品のプレミアムブランドとしての地位を活かすチャンスが広がっています。
中国市場の伸びと将来性について
中国のEC市場は今後も成長が期待されます。
Statistaの予測では、2025年の中国EC市場の消費者数は12億人に達し、市場規模は4兆ドルを超えるとされています。また、越境ECの割合も増加傾向にあり、2023年には全体のEC売上の約20%を占めるまでに成長しました(出典:Statista, 2024年)。
特に注目すべきは、Z世代とミレニアル世代の購買力の増加です。彼らはデジタルネイティブであり、ソーシャルメディアやライブコマースを通じて新しいブランドを積極的に試す傾向があります。
McKinseyのレポートによると、2025年までに中国のZ世代の消費支出は全体の40%を占める見込みです(出典:McKinsey China Consumer Report, 2024年)。
さて、ここからは具体的な開発手法のポイントをお伝えします。
中国向け通販事業を行う上での注意点と取り組み方の概要

適切なプラットフォームの選択
中国市場で成功するには、適切なECプラットフォームを選ぶことが重要です。以下に代表的なプラットフォームを紹介します。
- Tmall Global(アリババ傘下) ⇒国際ブランド向けのプラットフォームで、現地法人設立が不要。化粧品やファッションに強い(出典:TMO Group)。
- JD Global(JD.com) ⇒技術駆動型リテールが特徴で、家電や高価格帯商品に適している(出典:Ecommerce China Agency)。
- Douyin(中国版TikTok) ⇒ライブコマースに特化しており、若年層向け商品に最適。
製品タイプやターゲット顧客に合わせてプラットフォームを選ぶことが成功の鍵です。
中国消費者の行動理解
中国消費者は価格に敏感でありながら品質を重視する傾向があります。EY Chinaの調査によると、WeChatやXiaohongshu(小紅書)などのソーシャルメディアが購入決定に大きな影響を与えています。また、モバイルショッピングが主流で、全体のEC売上の約80%がスマートフォン経由です(出典:Statista, 2024年)。
ライブコマースの活用
中国ではライブコマースが非常に人気で、Taobao LiveやDouyinを通じてインフルエンサーがリアルタイムで商品を紹介しています。2023年のライブコマース市場規模は約2,000億ドルに達し、2025年には3,000億ドルを超えると予測されています(出典:iResearch, 2024年)。
日本企業もライブコマースを活用することで、消費者との直接的な対話を増やし、信頼関係を構築できます。下記のようなところが成功のポイントです。
・リアルタイムでの質問対応。
・魅力的なコンテンツと割引提供。
・現地の人気インフルエンサー(KOL)とのコラボレーション。
中国向けに展開する上での注意点と失敗事例

避けるべき一般的なミス
中国市場への参入でよく見られる失敗パターンを以下にまとめました。
- ローカライゼーション不足 ⇒ウェブサイトや商品説明が中国語に翻訳されていない、または現地のニーズに合っていない。
- 規制環境の無視 ⇒中国のEコマース法(2018年施行)や決済システム(Alipay、WeChat Pay)への対応が不十分。
- 顧客対応の遅さ ⇒中国消費者は迅速な対応を求めるため、カスタマーサポートが遅いと信頼を失う。
成功と失敗のケーススタディ
成功例ーユニクロ
ユニクロはTmall GlobalとJD.comを活用し、中国市場で大きな成功を収めました。現地向けの商品ラインナップやマーケティング戦略が功を奏し、2023年度の中国売上は前年比25%増を記録(出典:M-Brain, 2024年)。
失敗例ーセイコーエプソン
セイコーエプソンは市場調査不足とローカライゼーションの欠如により、中国市場で苦戦。現地の競合他社との価格競争に対応できず、撤退を余儀なくされました。
中国向け通販事業のメリットとデメリット

メリット
巨大市場へのアクセス ⇒10億人以上の消費者市場にリーチ可能。
ブランド認知の拡大 ⇒中国での成功はグローバルブランドとしての地位を強化。
売上増加 ⇒多角化による収益源の拡大
デメリット
激しい競争 ⇒地元企業や国際ブランドとの競争が激しい。
規制の複雑さ ⇒グレートファイヤーウォールやデータ保護規制への対応が必要。
初期投資の高さ ⇒現地パートナーとの連携やマーケティングにコストがかかる。
【技術観点】グレートファイヤーウォールや注意すべき技術要素

グレートファイヤーウォールの影響
中国のグレートファイヤーウォール(GFW)は、外国サイトへのアクセスを制限するインターネット検閲システムです。Google関連サービス(Google Analytics、Google Fonts、YouTubeなど)や多くの海外APIをブロックしています。これらを使用するとサイトが正常に動作しない可能性があるため、中国国内で利用可能な代替サービス(例: Baidu Analytics、Baidu Maps)を検討する必要があります。
ECサイトの場合も同様のため、中国国内でホスティングすることが推奨されます。GFWの影響を最小限に抑える方法として以下の対策が有効です。
・CDN(コンテンツ配信ネットワーク)の活用でアクセス速度を向上させる。
・中国国内サーバーの利用する。
クラウドサーバーはアリババがおすすめ
AWSは中国国内での運用に規制が多く、速度や安定性に課題があります。中国国内のユーザー向けに快適なアクセスを提供するには、中国本土にサーバーを置くのが理想的です。ただし、中国国外のサーバー(香港やシンガポールなど)を使用する場合、「グレート・ファイアウォール(GFW)」による速度低下やアクセス制限が発生する可能性があります。
そのため、中国国内にノードを持つサービスであるアリババクラウドは以下の理由で推奨されます。
- 中国国内にデータセンターがあり、高速かつ安定したアクセスを提供。
- 中国の規制(ICPライセンス取得など)への対応がスムーズ。
- TmallやTaobaoとの統合が容易で、EC運営が効率的。
アリババクラウドはコスト効率も高く、中小企業でも導入しやすい点が魅力です(出典:Alibaba Cloud公式サイト, 2024年)。
ICPライセンスの取得
中国でウェブサイトを公開する場合、ICP(インターネットコンテンツプロバイダー)ライセンスが必要です。
これは中国政府が発行するもので、合法的にサイトを運営するために必須です。
特に、中国本土のサーバーを使用する場合はICP登録が義務付けられています。取得には時間がかかるため、早めに手続きを進めることが重要です。
モバイルファースト設計と、ローカル決済システムの統合
中国ではスマートフォン経由のインターネット利用が非常に多いため、モバイル最適化が不可欠です。特にWeChatやAlipayなどのアプリ内ブラウザでの動作確認を行い、レスポンシブデザインや軽量なページ設計を心がけましょう。
また、中国ユーザーに適した決済手段(WeChat Pay、Alipay、UnionPayなど)をサポートすることが重要です。これらのAPIを適切に組み込み、セキュリティ基準(例: SSL/TLS暗号化)を満たす必要があります。
フォントとエンコーディング
中国語(簡体字)に対応したフォントを選び、UTF-8エンコーディングを使用することで文字化けを防ぎます。また、Google Fontsが使えないため、ローカルホスティング可能なフォントや中国製フォント(例: Noto Sans CJK)を検討してください。
ただし、同じ中国向けでも簡体字ではなく、繁体字を好む人もいます。ここはターゲットやポジショにンぐなどのマーケティングにより対応するポイントになります。
SEOと検索エンジン対応
Googleではなく、Baiduが中国の主要検索エンジンです。
Baidu SEOに最適化するため、メタタグの適切な設定、サイトマップの提出、高速な読み込み速度を確保することが重要です。また、Baidu Webmaster Toolsを活用してインデックス状況などを確認しましょう。
おすすめの中国向け越境ECツールの紹介

中国市場での成功を支援するツールをいくつかご紹介いたします。
- Shopify+Tmall Global連携 ⇒Shopifyを利用して越境ECサイトを構築し、Tmall Globalと連携することで、中国市場へのアクセスが容易に。
- WeChatミニプログラム ⇒WeChat内で動作する軽量アプリで、EC機能を実装可能。ソーシャルコマースに最適。
- Douyin広告ツール ⇒ライブコマースや短編動画広告を通じて、若年層にリーチ。
これらのツールを活用することで、効率的に中国市場に参入できます。
中国向けECサイト構築はシステム開発は㈱アスリエにご相談ください

中国向け越境EC市場は、大きなチャンスと同時に多くの挑戦を伴います。しかし、適切な戦略と技術的対応を行うことで、日本企業は成功を手にすることができます。
市場調査からプラットフォーム選定、技術インフラの構築まで、当社では中国市場進出をトータルでサポートします。中国向けECサイト構築や通販事業の展開でお悩みの方は、ぜひお気軽に当社へお問い合わせください。貴社の中国市場進出を成功に導くための最適なソリューションをご提案いたします。
他にも以下の開発サービスを提供しております。
■WEB開発
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