2023年10月18日に「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」が開かれ、技能実習生制度に代わる新たな制度が来年頭からの通常国会に提出されるようです。
そこで今回は、新制度のあらましを踏まえつつ、これからどうなってゆくのかを考えてみたいと思います。
1、技能実習生に代わる新制度について
①技能実習生、1.2万人所在不明
技能実習制度において、失踪する外国人が後を絶ちません。
30万人超の外国人が働く技能実習制度において、2023年4月時点で1万2千人が所在不明である状態です。
実習生制度の問題点はいくつも挙げられますが、
例えば、以下の問題点などがあります。
・日本に来たことがない、居住経験のない外国人である
・事業者が最低賃金で雇用できる
・原則的に転職できない
・就労するまでに多くの借金を抱えるケースが多い 等
ですので、多くの実習生の方は、様々な不満などにより不法就労などを始めとした失踪に走ってしまうという事象が発生しています。
他方で、特定技能制度においては、21年末に約5万人が働いていたのに対し、同年の不明者は76人にとどまったとの報告です。
両制度における外国人失踪率については、技能実習生が延べ失踪人数に対し、特定技能は21年度の単年での失踪人数のため、単純に失踪率比較はできませんが、「特定技能制度の方が失踪率がかなり低い」といえそうです。
(出典引用:日経新聞2023年8月9日記事より)
②技能実習に代わる新制度は就労1年超で転職可能になる?
多くの問題を抱える技能実習生制度については、政府が代替の新制度を設ける方向で、有識者会議の取りまとめを経て、24年1月からの通常国会への提出となりそうです。
【新制度概要】
・目的は人手確保(人手不足解消)
・最初の在留期間は3年間
・同じ分野内で転職は可能。1年間以上の就労実績や、基礎的な技術と日本語能力が必要
・特定技能への移行も可能。
※技能面:技能検定3級等又は特定技能1号評価試験合格
日本語能力面:「N4」以上の日本語能力があれば
現行の技能実習制度は、上述の通り多くの問題点がありますし、「転職できない」なんて、労働者の権利がない制度ですので(そもそも実習生は労働者ではないですが)、少なくとも現行の技能実習制度よりは改善されるのではないかと思われます。
出典:最終報告書たたき台(概要)(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議事務局作成)
2、特定技能2号についての分野拡大について
翻って、特定技能制度については、特定技能2号について、これまで2分野(建設、造船・船用工業)のみが対応枠でしたが、
2023年6から新たに9分野追加され、全11分野の業種となりました。
【追加された職種】
①ビルクリーニング業
②素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
③自動車整備業
④航空業
⑤宿泊業
⑥農業
⑦漁業
⑧飲食料品製造業
⑨外食業
※ちなみに、介護分野は対象外であり、在留資格「介護」という制度が設けられています。
現在のところ、技能実習生制度、特定技能制度、今度新設される制度において、家族帯同が許可されているのは特定技能制度の「特定技能2号のみ」となります。
今後数年はこの「特定技能2号を取って長い間日本で就労してくれる外国人材を増やす」というところが、政府の目標になりそうです。
5、まとめ
新制度のあらましは明らかになってきましたが、まだ確定情報ではありませんので、その動向には注意が必要です。
また、「特定技能制度の適正化方策」の中で、「登録支援機関の登録要件や支援業務委託の要件を厳格化」というものもあります。
人手不足に頭を抱える事業者側はこういった情報を総合的にキャッチアップしながら、今後の人材採用計画を考える必要があります。
ぜひ今回の情報がお役に立てれば幸いです。
当社では、特定技能外国人の採用に関する情報提供や、採用/雇用相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。