外国人従業員のための年末調整ガイド やさしい日本語で解説
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「年末調整(ねんまつちょうせい)」という言葉を、会社で初めて聞いて戸惑っていませんか? 日本の税金の手続きは、日本人にとっても複雑で難しいものです 。
この記事では、日本で働く外国人の皆さんと、その皆さんをサポートする日本人担当者の方に向けて、「年末調整」とは何か、誰が・何を・いつまでにやるべきかを、やさしい日本語で分かりやすく解説します。
特に、海外に住んでいる家族にお金を送っている場合の重要なポイントも詳しく説明しますので、ぜひ最後まで読んで準備を進めてください。
目次
そもそも「年末調整(ねんまつちょうせい)」とは?

なんのためにやるの?
年末調整とは、1年間の給与に対して支払った所得税を精算する日本の独特な税務手続きです。
あなたが1年間(1月〜12月)に払った所得税(しょとくぜい)の金額を、年末に正しく計算しなおす手続きになります。
毎月の給料からは、税金が少し多めに天引き(源泉徴収)されています。その1年間の合計額と、本来あなたが払うべき正しい税金の額を比べて、払いすぎていればお金が戻ってき(還付)、足りなければ追加で支払います 。
外国人も年末調整が必要なのか?
日本で働く外国人労働者も、日本の給与所得者として年末調整の対象となります。
正確な手続きを行うことで、不必要な税金の支払いを避け、場合によっては税金の還付を受けることができます。
日本の税制は日本人でも完全に理解している人は少ないです。
また、申告を間違えたり虚偽の申告を行ったりすると、あなたも、企業にも罰則を科されることがあります。注意してください。
【重要】あなたは年末調整が必要?

年末調整の対象となる外国人について
外国人への所得税の課税については、納税者を3つの種類に分けて判断され、この種類ごとに年末調整を行うかどうかも決まります。3つの種類とは、「居住者」「非永住者」「非居住者」になります。
※ここからは難しい日本語をたくさん使いますので、翻訳サイトなどを使いながら読み進めてください。
居住者(非永住者以外の居住者)
日本国内に生活の拠点である住所を持っている人で、1年以上居住している人をいいます。
居住者の場合は国内外のすべての源泉所得について課税され、年末調整を行う必要があります。
非永住者
非永住者とは、日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。
非永住者は、所得税法に規定する国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税されます。
非居住者
日本国内に住所がなく、かつ現在まで引き続いて1年以上居所がない人は、「非居住者」に分類されます。
非居住者に対する課税は、国内での源泉所得のみが課税対象とされます。ただし、同じ「国内源泉所得」であっても、その支払を受ける非居住者等の「恒久的施設」(Permanent Establishment)の有無、その「国内源泉所得」が「恒久的施設」に帰せられる所得かによって、課税関係が異なります。
外国人社員が「居住者」「非永住者」に該当する場合で、給与等の支払時に源泉徴収を行っていれば、原則として年末調整が必要となります。納税額は、日本人社員と同様に所得に応じて計算し、源泉徴収分の総額との差額によって納付・還付を行います。
「非居住者」に該当する場合は、給与の支給額に一律20.42%の税率を乗じて所得税額等を算出し、給与支払月の翌月10日までに納付することになっています。つまり、源泉徴収のみで課税額が確定するため、年末調整は必要ありません。
例えば、特定技能で初めて日本で働く場合、1年目は「日本に1年以上住んでいない」ことになるため、非居住者に該当し、給与の支給額に一律20.42%の税率を乗じて源泉徴収します。2年目以降は、日本人と同じく毎月の給与から源泉徴収を行い、年末調整で精算します。
参考3:国税庁「居住者、非永住者及び非居住者(第3、4、5号関係)」
年末調整の対象となる外国人について
外国人の方の場合、日本に住んでいる期間によって年末調整が必要かどうかが決まります。まずは下のチャートで確認してみましょう。

◆質問◆ あなたは日本で働き始めて1年目ですか?
はい (YES) → あなたは「非居住者」に該当する可能性が高いです。
- 給与からは一律20.42%の税金が源泉徴収されます。
- 原則、年末調整は不要です。
いいえ (NO) → (日本で働き始めて2年目以降、または1年以上日本に住んでいる) あなたは「居住者」に該当する可能性が高いです。
- 日本人と同様に、毎月の給与から税金が源泉徴収されます。
- 年末調整が必要です。
年末調整の進め方と必要な書類

いつ・どうやって進めるの?
年末調整の手続きは、あなたの会社が進めてくれます 。
11月頃になると、会社の担当者(総務や人事など)から書類が配られますので、その指示に従って必要な情報を書き、証明書などと一緒に提出してください 。
会社の人がサポートしてくれると思います。
会社に提出する主な書類
以下の書類を準備しましょう。
会社で用意してくれる書類もあります。
- 源泉徴収票
- 扶養控除等申告書
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 障害者控除対象者証明書(該当する場合)
- 寄付金控除証明書(該当する場合)
書類は日本語で書かれていると思いますが、日本の国税庁が外国語版を出していますので参考にしてください。
ただし、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フィリピン語の説明文です。
参考④国税庁 年末調整がよくわかるページ(各種申告書・記載例)より
【最重要】海外に住む家族のための「扶養控除」とは?

海外に住む家族(親・配偶者・子どもなど)の生活費を、あなたの給料から送金している場合、「扶養控除(ふようこうじょ)」という制度を利用できる可能性があります。
税金が安くなる「扶養控除」のしくみ
扶養控除とは、「家族の生活を支えている」という事実を申告することで、あなたの所得税を計算する際の基準額が下がり、結果的に税金が安くなる制度です。 これを利用するためには、「あなたの親族であること」と「あなたがその親族の生活費を送金していること」を証明する書類が必要です 。
これらの書類が外国語で書かれている場合には、翻訳したものも添付する必要があります。
必要な証明書①:親族関係書類
本人と国外に居住する家族が親族であることを証明する書類で、以下の2点が必要です。なお、戸籍の附票の写しやパスポートの写し以外は、原本でなければなりません。
・戸籍の附票の写しその他の国または地方公共団体が発行した書類、及び国外居住親族のパスポートの写し
・外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所または居所の記載があるもの)
■戸籍謄本 例

必要な証明書②:送金確認書類
「送金確認書類」とは、本人が国外に居住する親族の生活費や教育費に充てるために送金したことを証明できる書類です。送金確認書類は必ずしも原本でなくても構いません。
・銀行の海外送金依頼書や、送金サービス(Wise、Western Unionなど)の利用明細
・あなたが契約したクレジットカードを家族が使っている場合、その利用明細書
■利用明細(送金明細) 例

注意!控除が認められないケース
・日本で働く本人から、母国の住民票に記載されている家族に送金している実績が必要です。
・友人や会社の人から送金してもらった場合は対象になりません。
・海外送金の際は、為替レートと手数料に注意してください。
・送金証明書は必ず保管してください。
尚、もし母国で社会保険制度を利用している場合や、生命保険、地震保険などを外国企業と契約している場合、日本で所得税の控除を受けることはできません。
母国の住民票や、送金明細などは、日本語での翻訳が必要になります。
翻訳が必要な場合は、プロに依頼しましょう。
よくある質問(FAQ)コーナー
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外国人からのよくある質問
以下に記載します。
Q1. 家族への送金を、会社の同僚や友人にお願いしました。この送金証明書は使えますか?
A1. いいえ、使えません。扶養控除の対象となるのは、日本で働くあなた本人から、母国に住む家族へ直接送金した実績が確認できるものだけです。
Q2. 母国の書類の翻訳は、自分でやってもいいですか?
A2. 税務署に提出する重要な書類ですので、内容の正確性を担保するため、プロの翻訳会社や行政書士に依頼することをお勧めします。当社では翻訳サービスも提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
Q3. 年末調整をすると、お金はいくら戻ってきますか?
A3. 戻ってくる金額は、あなたの1年間の給与総額、社会保険料、扶養している家族の人数などによって決まるため、人それぞれ異なります。
Q4. 「親族関係書類」とは、具体的にどの書類ですか?
A4. インドネシアの場合は『Kartu Keluarga』、ベトナムの場合は『Sổ hộ khẩu』など、国の公的な家族証明書です。
やることチェックリスト
最後に、読者が次に行うべきアクションを明確にするためのチェックリストを記載します。
□ 11月頃、会社から年末調整の書類をもらう
□ (海外の家族を扶養する場合) 母国の「親族関係書類」を準備する
□ (海外の家族を扶養する場合) 1年分の「送金確認書類」を集める
□ 母国語の書類は、日本語への翻訳を依頼する
□ 会社からもらった書類に記入する (分からなければ会社の人に聞く)
□ 準備したすべての書類を、会社の指定する期限までに提出する
チェックしてみてください。
まとめ|困ったときは会社や専門家に相談を

この記事が、日本で働く外国人の皆さんの年末調整のお役に立てれば幸いです。
年末調整は複雑に見えますが、事前に準備し、必要書類をしっかり揃えれば、スムーズに手続きを完了できます。不明な点がある場合は、雇用主や税理士に相談することをおすすめします。
当社では、年末調整における翻訳業務や年末調整の相談業務も行っております。
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